Tektronix TDS5034Bっていうガチでヤバイオシロスコープを手に入れたんですよ。
テクトロニクス製の超高級オシロスコープです。新品で買うと新車が買えるような価格らしいです。
インテル入ってる。Windowsも入ってる。そんなオシロスコープです。
内部にWindows 2000が組み込まれてて、波形計測はWindows上で走るソフトウェアで行います。(Windows 2000 Professional for Embedded Systems)
ハードウェアは、普通のintel製マザーボード(D865GLCLK、microATX規格、i865Gチップセット)、Celeron 2.0GHz、512MB RAM、HGST製80GB HDDのPCが組み込まれ、マザーボードのPCIスロットに各種I/Oのためのメイン基板が刺さっています。
前面の操作パネル、タッチ式ディスプレイ、計測用の信号処理のための基板はPCIスロットのメイン基板に接続されています。
つまり、普通のPCにPCIスロットにいろいろ接続することでオシロスコープにした、みたいな感じ。
マザーボードを交換して自分だけのオリジナルオシロスコープを作ろう!みたいな遊びができそう(やらないけど)
このオシロスコープは故障品でした。というわけで修理をしてみました。症状としては、「自己診断が通らない」「波形が出ない」「タッチパネルが暴走する」です。

というわけで中身を見てみましょう。
内部はこんな感じになってます。ねじはヘックスローブのものが使用されてます。プラスねじではなくあえてヘックスローブねじを使うところが高級感があっていいですね!プラスねじと違ってヘックスローブねじは力いっぱい回しても頭をなめることがなくてすごく回しやすいです。
分解してみて、これは巨大なアルミ製金庫みたいだと思いました。何枚ものアルミ板がたくさんのねじで厳重に固定されてます。ノイズ対策のためにシールドがしっかりしてるんですね。分解するのが大変です。
信号処理基板を見てみましょう。

これはデジタルオシロスコープの心臓部、入力信号を増幅してADコンバータでデジタル信号に変換、波形データをメモリに取り込むという基板です。信号処理基板とでも名付けましょうか。
画面左下に注目。おわかりいただけただろうか・・・
燃えてる!!!燃えてるよ!!!!!
タンタルコンデンサとチップトランジスタが炎上してます。これはひどい。
タンタルコンデンサは0Ωの抵抗となってました。ひどすぎる。
おそらくタンタルコンデンサがショートモード故障、タンタルコンデンサ炎上、それに伴いトランジスタに過電流、トランジスタ異常発熱で炎上、みたいな流れでしょう。トランジスタがヒューズとして働いてくれたおかげで故障はここ以外に波及してませんでした。タンタルコンデンサ許さねえ。
おそらくタンタルコンデンサは電源の平滑とノイズ除去に使われてたと思われます。
タンタルコンデンサを電源の平滑に使用するのはやめましょう。燃えます。
というわけで修理後の写真です。
タンタルコンデンサは積層セラミックコンデンサに交換。容量が足らないために5個をパラレル接続。もともとの容量は33uF、今回は2.2uF×5。容量が全然足らないwwww
トランジスタはデータシート見て比較し互換性がありそうなトランジスタに交換。
見た目がひどい、コンデンサ容量が1/3、トランジスタのhfeが1桁違うなどという超絶適当修理ですが動いたので気にしない。部品を買う手間を惜しんだ結果がこれだよ!!!
容量が減ったからノイズ増えるかも?と思ったけどプローブをGNDに接続したときのノイズは数mV、多い時でも10mV(p-p)以下なので許容範囲。自己診断でも異常なし。



このような経緯を経て、ようやく念願の波形を拝めたわけです。長く苦しい戦いだった。
タッチパネルの暴走は、なんか知らんけどタッチパネルのキャリブレーションしたら直りました。
最後に
基板上にはまだ複数のタンタルコンデンサが残ってるため、別のタンタルコンデンサが炎上するかもしれない。
しかも製造時期が台湾製不良電解コンデンサ問題と重なっている。
マザーボードの型番でGoogle検索すると3番目にコンデンサ死亡のWebページが出てくる。
ふええ・・・もういやだよぉ・・・
タンタルコンデンサはそのうち全部交換しようかと思ってます。
おまけ
Windowsが入ってるのでネットワークにつなげてネットサーフィンしてみた。



オシロスコープの利用状況
Windowsのイベントビューアー、HDDのSMART情報、から前の所有者がオシロスコープをどんなふうに利用していたかを推測してみました。自分用のメモです。
2015/6/19現在の情報です
起動回数:574回
使用時間:2627時間
初回起動:2004/6/18?
拾った日:2015/6/18
奇しくも、拾った日は初回電源投入のちょうど11年後でした。
イベントビューアーから利用状況を調べると、2012年8月以降より電源が投入されず、放置されているようでした。おそらくその時期に故障したのでしょう。2015年5月に1回だけ起動した痕跡があります。捨てる前に動作確認したのでしょうか。
追記 2015/6/24
ほかのタンタルコンデンサの炎上を防ぐために、信号処理基板のタンタルコンデンサの全交換を行いました。





セキュリティサポート切れてるOSだしネットに繋ぐのは大丈夫なのか・・・?
Windows2000だとChromeインスコ出来ない罠(Win32APIが足りてない)
Windows 2000 Professional for Embedded Systemsの延長サポートは2010/7/13、EOL(End of Life:プリインストールした機器を出荷可能な期間)も2015/3/31で終了してますね。(参照→ http://esg.teldevice.co.jp/product/microsoft/schedule.html )
サポート切れOSをインターネットに繋げるのはセキュリティーの問題があるので良い子はマネしないでください。
Firefox 10 ESRならWindows 2000にインストールできます。
(Windowsの組み込み機器向けエディションのサポート期間の概念が複雑でよくわからんです・・・。)
タンタルコンデンサーなら電源ラインの
平滑・安定化用パスコンですから高信頼電解コンデンサーと
セラミックコンデンサー(高周波域改善のため)のパラで
良かったのでは・・・等と申してみます。
に、しても測定器でネット遊びすな(笑)
まあ、おいら別件でMRI-CTのコンソールPCで
昼休みにソリティアやっている技術員を
見かけたことありますがね。あれも驚き笑いだった。
こんにちは、
たまたまネットでこの記事を見付けました。 私のTDS5104も壊れて、どうしようかとネットを見てみました。 私の場合、”Boot Failure”で起動しません。
何か解決策は考えられませんでしょうか?
ワラにも縋る気持ちです。
> ”Boot Failure”で起動しません。
たぶん、中のHDDが壊れてるんじゃないでしょうか?
HDDの交換と、OSのインストールで直ると推測します。
HDDは、3.5インチのIDE接続のものを入手して交換すればよいと思います。
OSの再インストールですが、Tektronix純正のOSリカバリーディスクが必要じゃないかなあという気がします。
もしかしたら、普通のWindows 2000をインストールした後に、「TDS5000 SERIES FIRMWARE」をインストールすれば、純正リカバリーディスクなしで修理できるかもしれません。
TDS5000 SERIES FIRMWARE
バージョン 1.2.1 → https://jp.tek.com/oscilloscope/tds5052-software/tds5000-series-firmware
バージョン 1.1.5 → https://jp.tek.com/oscilloscope/tds5052-software/tds5000-series-firmware-0
TDS 5000 tek non-B restore OS prj
https://www.eevblog.com/forum/testgear/tds-5000-tek-non-b-restore-os-prj/
Help! Need recovery CD for WinME version of TDS 5054
https://www.eevblog.com/forum/repair/help!-need-recovert-cd-for-winme-version-of-tds-5054/
非常に、非常に遅れてしまいましたが、大変親切なご助言戴きありがとうございました。
実はこの書き込み後、新たなオシロ(TDS-シリーズ、3GHz)を購入したので、この投稿の返信は期待をしておりませんでした。 大変申し訳ございませんでした。
今日偶然、再度この記事を発見しました。
ブログ等、同じ技術屋として大変興味深く拝見しております。
今後共ご活躍ください。
再度、返信が遅れたことをお詫び申し上げます。
因みに私も静岡在住です。