DVDピックアップの解析

PDIC closeup. Die marking is “NEC C9134”.

本記事では、レーザー走査型顕微鏡を作るためにDVDピックアップのリバースエンジニアリングをしたので、その結果を紹介します。
次回「レーザー走査型顕微鏡を作るで、顕微鏡の作り方を紹介します。

はじめに

光学ディスクのピックアップは、大量生産によって非常に安価に入手できるわりに、とんでもない性能を持っています。

  • レーザー光を直径1μm程度のスポットに集光させる
    • 2層DVDの層を分離できる程度の非常に薄い被写体深度と高精度なピント合わせ
    • 「非点収差法」を使って、物体との距離を精密に測定できる
  • 高速かつ高精度なスポット位置決め
    • ディスクに700nm間隔で並ぶ幅300nmのトラックに正確に追従
    • 10000rpm・線速度60m/s(216km/h)で回転するディスクに追従できる程度の速さ
  • 非常に強いレーザー出力
    • パルス駆動で300mW、連続発光(CW)で100mW程度 (書き込み対応ドライブの場合)
    • レーザー加工機と比べたら小さいが、こっちは直径1μmに集光できるぞ
  • 高周波性能
    • レーザー光を100MHzで点滅させて、反射光を検出できる

用途

このように、ピックアップはDVDを読み込むだけに使うにはもったいないくらいの性能を持っています。なので、いろんなことに使えます。

リバースエンジニアリング

こんな安価かつ高性能なおもしろデバイスを使わないわけにはいきません。そのためには、使い方を知る方法があります。
ピックアップのデータシートは社外秘であり、使い方を知る方法はリバースエンジニアリングしかないのです。

実際、Xbox360のHD-DVDドライブに使われていた 東芝 PHR-803T ピックアップは、世界中のオタクが寄ってたかって解析してくれたおかげで、仕様がほとんど丸裸になっています。もはやレーザーピックアップ工作界隈のデファクトスタンダードです。

今回は、PHR-803T より安い、AliExpressで300円くらいで買えるXbox360のDVD-ROMピックアップ "HOP-150X" (別型番: "HOP-15XX" ) を解析しました。
レーザーダイオードと受光素子(PDIC)のピンアサインをまとめておきます。

PDIC

レーザー光を受光して電気信号に変換するPDIC (Photodetector IC)の解析。
DVD用PDICは100MHzで点滅する光を電気信号に変換できるくらいの応答速度があるので、いろいろと使い道はあると思います。
PDICのダイには"NEC C9134"の記載があります。

PDIC ピン番号

ピンアサイン (Pinout)

PDICに赤色LEDを照射して、ピンの電圧がどのように変化するのかを調べました。
電源電圧は5Vです。リファレンス電圧 Vref には2.0-2.5V程度を加えればよいでしょう。

Pin NO.NAMETYPENOTE
1VccPOWER5.0V
2RF-Diff OUT40mVp-p
3RF+Diff OUT40mVp-p
4OUT1Analog OUT20mVp-p
5OUT2Analog OUT20mVp-p
6OUT3Analog OUT120mVp-p
7OUT4Analog OUT120mVp-p
8MODE_SELECTDigital INCD or DVD
9OUT5Analog OUT120mVp-p
10OUT6Analog OUT120mVp-p
11OUT7Analog OUT20mVp-p
12OUT8Analog OUT20mVp-p
13VrefPOWER2.0 – 2.5V ?
14GNDPOWER
PDIC testbench. Illuminated by a red LED.

センサ出力は、振幅が小さい(20mVp-p)グループと、振幅が大きいグループ(120mVp-p)に分かれます。
どの検出領域がどのピンに対応しているのか、までは調べていません。
おそらく、振幅が小さいグループがメインの受光素子、振幅が大きいグループがトラッキングエラー用の受光素子なのだと思います。知らんけど。

非点収差法によって「フォーカスエラー信号」、つまり ディスクと対物レンズの距離 が得られます。
フォーカスエラー信号は、メインの4個の受光素子の出力を加減算することで求められます。 さらに解析を進めて、フォーカスエラー信号の取得までやりたいですね。

フォーカスエラー信号が得られれば、精密・非接触・高速応答の高性能な距離計(レーザー変位計)として使えます。素晴らしいですね。
μmオーダーの微小な変位をMHzオーダーの高速応答で検出できるんですよ、すごくないですか?いろんなことに使えそうですよね。

トラッキングエラー検出は、「トラッキングサーボによってレーザーがトラックからずれないようにする」役目があります。 ディスクを読み込むときのトラッキングエラー検出以外の使い道が思いつきません。

非点収差法、フォーカスサーボ、トラッキングサーボの詳細については、下記の文書を読んでみてください。

Laser Diode

赤色LDは100Ωの電流制限抵抗を直列につないで5Vを加えると、30mAくらいで良い感じに光りました。Vf=2.0Vくらいですかね?

基板にはLD制御用と思われる6ピンのICが載っていますが、その使い方までは調べていません。 おそらく、ICはLDを数MHzで点滅させるような動作をしているのだと思います。
LDを点滅させると、ロックインアンプの原理を使って信号処理によってノイズ(外乱光)を除去することができます。
また、点滅させることによって発熱が減るので、ピーク輝度を引き上げることができます。

LDは静電気にメチャクチャ弱いので、取り扱いには気を付けてください。

Laser Diode pin number. ピン番号

Pin NO.NAME
1LD RED(赤色) +
2GND
3不明
4LD IR(赤外線) +

はんだジャンパ外し

新品のピックアップは、レーザーダイオードが静電気で壊れないようにはんだジャンパでショートしてあります。
はんだジャンパを除去しないと、レーザーダイオードが点灯しません。
レーザーダイオードは静電気にメチャクチャ弱いので、取り扱いには気を付けてください。

ボイスコイルモータ

レンズを動かすボイスコイルモータ。
抵抗値は4~5Ω。
可動範囲の端から端まで動かすのに必要な電圧は±200~300mV程度。

おまけ

型番の命名規則とか形状の類似性を考えると、もともとは日立グループの製造のような気がします。

参考: 日立評論 DVD-ROM用光ピックアップ

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